“用済み”になった元繁殖猫と運命の出会い…「見つけられて嬉しい」と思わず涙 自由でのびのび過ごす姿に「こっちが幸せをもらっています」

渡辺 陽 渡辺 陽

繁殖屋からレスキューされた元繁殖猫

テスちゃん(7歳・メス)は、保護団体が繁殖屋から保護した元繁殖猫だ。繁殖猫として何匹も赤ちゃんを産んでいたという。猫が用済みになると、繁殖屋は手放してしまう。

東京都在住のIさんは家を建て、ペットを飼育できる環境になったので、猫を飼おうと思っていた。

「私たち夫婦は実家で犬を飼っていましたが、夫婦ともに自宅で仕事をしているので、猫のいる生活も想像できました。それに、マイペースな性格の猫のほうが自分達に合っていると思いました」

最初は近所の猫カフェに通ってみたがなかなか出会いがなく、2021年の初めにはネットでも保護猫を探し始めた。

譲渡サイトでも子猫や子犬は人気で、すぐに譲渡先が見つかる。しかし、5歳だったテスちゃんは、掲載後半年経っているにも関わらず、誰からもオファーがなかった。

「簡単に言えばいわゆる一目惚れだったのですが、夫に『この子にしたい』とテスの写真を見せた時、既に私は涙ぐんでいました。可哀想とかそういう気持ちではなくて、見つけられて嬉しいと思いました」

2021年2月、夫妻はテスちゃんに会うために、車で2時間以上かけてボランティアさんがセッティングしてくれたお見合いの場所に行った。

「その時はテスも警戒していますし、触ったり抱っこしたりすることはできなかったのですが、仕草や行動が可愛らしくて早くお迎えして幸せにしてあげたいなと思いました」

テスが幸せにしてくれる

お見合いはうまく運び、3月、夫妻は正式にテスちゃんを迎えた。初日、テスちゃんはキョロキョロと落ち着かない様子で、家中を散策していた。

「怖がることはなく、興味津々といった感じです。私たちは撫でたり抱っこしたりしたい気持ちを抑え、彼女がこの場所に慣れるまで、できるだけそっとしておきました」

名前は、迎える前から毎日いろいろ考えた。呼びやすい響きが決め手になって、「テスちゃん」にした。

ボランティアからも「シュールで可愛いキャラだ」と聞いていたが、テスちゃんは、とにかく太々しくて甘え下手でプライドが高くて、「ザ・猫」という感じ。

「そこがたまらなく可愛いです。それとすごい食いしん坊で、ご飯は速攻食べてお皿まできれいに舐め回します(笑)。時間ぴったりに『お腹すいた〜』とご飯をねだりにくるのにも驚きますが、食への執着がすごくて、太らせないようにするのが大変です」

元繁殖猫なので自由がなく、食べることしか楽しみがなかったことを想像してしまうというIさん。美味しそうに食べる姿を見るとつい沢山あげたくなってしまうという。

テスちゃんを迎えてから想像以上に癒されるというIさん夫妻。

「最初は私たちが幸せにしてあげたいと思ったのですが、こちらが幸せにしてもらってばかりです。旅行に行く時は両親にお世話を頼むのですが、早く会いたくてたまらないです。テスのおかげで動物保護への関心も高くなりましたし、もっと沢山の行き場のない動物たちを助けたいと思い始めています」

Iさんは、ペットショップの前を通ると、子猫や子犬を見て可愛い!!と思うという。

「その子にも産まれてすぐ引き離されたお母さんがいて、子どもを奪われて産むだけ産まされてるテスみたいなお母さんがいると想像するようになりました。『ペットショップで命を買わない』という選択肢を広めていきたいです」

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